工場やオフィス、商業施設などの運営において、最も避けたい事態の一つが「設備の突然の停止(シャットダウン)」です。生産ラインが止まれば多額の損失が発生し、ビジネスの信頼性にも関わります。しかし、私たちが長年「安全の要」として信じてきた従来の対策だけでは、現代の複雑な電気設備に潜むリスクを防ぎきれなくなっているのが実情です。
本記事では、動画「【接地系電気設備の絶縁監視】事故を未然に“予測”する!設備保全の新常識」の内容に基づき、なぜ予期せぬ停電が起きるのか、そしてビジネスを止めずに安全を守る「予知保全」の最前線について解説します。
1. 従来の「漏電遮断器(RCD)」が抱える課題
多くの現場で安全対策として導入されているのが、漏電遮断器(RCD)です。その役割は非常にシンプルで、電気が本来のルートから漏れ出す「漏電」を検知した際、即座に回路を遮断して電気を止めることにあります。

「事後対応」という限界
RCDはいわば「最後の砦」であり、問題が起きた後に作動して人命や火災を防ぐ装置です。しかし、この「即座に止める」という正義感の強い働きが、現代のビジネスの現場では逆の弊害を生むことがあります。
- 予告なき停止: 何の前触れもなく生産ラインが止まり、復旧までに多大な時間を要する
- 誤作動のリスク: 現代の設備に欠かせないインバーターやサーボアンプから発生する「電気的ノイズ」を漏電と勘違いし、異常がないのに設備を止めてしまう
- 検知漏れ: 逆に、直流(DC)成分を含む漏電が発生した場合、従来のRCDでは検知できず、遮断器が反応しないという極めて危険な状態に陥る可能性もあります
つまり、従来の「止める」だけの安全対策は、現代の高度な設備環境においては、時としてビジネスの足を引っ張る要因になりかねないのです。
2. 止めるのではなく「知らせる」:残留電流モニター(RCM)の登場
そこで注目されているのが、残留電流モニター(RCM)電気回路の健康診断装置です。
24時間の常時監視と予知保全

RCMは電気回路の健康状態を24時間体制で見守り、漏れ電流の値を常に監視します。数値が徐々に上がってきた段階で、「このままでは危ないかもしれない」と早い段階でアラームを発信します。
この仕組みがもたらす最大のメリットは、「事後対応」から「予知保全」への転換です。
- RCD(事後対応): 危険なレベルに達してから突然シャットダウンする
- RCM(予知保全): まだ安全なレベルのうちに異常の予兆を伝え、時間的な余裕を生み出す
この「時間的な余裕」があることで、週末や夜間など、生産に影響が出ないタイミングを選んで計画的なメンテナンスを行うことが可能になります。突然のダウンタイムを避け、緊急修理に伴う高額なコストも抑制できるため、結果として生産性を最大限に高めることができるのです。
3. 日本の一般的な装置との決定的な違い:監視できる「範囲」
「うちは既に絶縁監視装置を入れている」と思われる方もいるかもしれません。しかし、世界的な基準で見ると、日本で一般的に普及している監視装置と、Bender社(Bender)などの最新RCMには、監視できる周波数範囲において決定的な差があります。

周波数がビジネスの成否を分ける
多くの国内メーカーの監視装置は、家庭用コンセントと同じ50Hzや60Hzといった特定の周波数しか見ていません。これは、特定のラジオ局しか受信できない古いラジオのような状態です。
対して、Bender社のRCMは、0Hz(直流:DC)から20,000Hz(20kHz)という極めて広い範囲を監視できます。
- 交流(AC)はもちろん、直流(DC)も監視可能
- これらが混在した複雑な回路にも対応
なぜこれが重要なのでしょうか。その理由は、皆さんの周りにある最新設備にあります。インバーター、サーバーの電源、電気自動車(EV)の充電器などは、従来の監視装置では捉えきれなかった「直流」や「高い周波数」の漏電を発生させます。これらを見逃さず、正確に捉えることができる能力こそが、設備の「本当の健康状態」を知るための鍵となります。
4. グローバルビジネスにおける「戦略的ツール」としてのRCM
RCMの導入は、単なる現場の安全対策に留まりません。経営全体にプラスをもたらす戦略的な投資としての側面を持っています。

国際規格への対応と海外展開
Bender社のRCMは国際規格に対応しており、これは世界市場を目指す企業にとって強力な追い風となります。自社で製造した機械やシステムを海外に輸出する際、世界的に認められたRCMが組み込まれていれば、厳しい安全基準をクリアしやすくなり、大きなアドバンテージを得ることができます。
信頼性の向上
「トラブルが起きてから大慌てで対応する」時代は終わりを告げようとしています。問題を予測し、未然に防ぐ姿勢は、メンテナンスコストの削減だけでなく、ビジネスそのものの信頼性を高めることにつながります。
結論:未来のビジネスを守るための選択
インバーターやEVが当たり前となるこれからの時代、電気の安全に対する考え方を根本から変える必要があります。
従来の「止める」安全から、RCMによる「見守り、予測する」安全へ。このシフトこそが、不測の事態に強い強靭なビジネス基盤を築くための新常識です。皆さんの施設は、これからの時代の変化に対応できているでしょうか?未来のビジネスを守るための賢い選択が、今まさに求められています。

